「変える決意と変わる覚悟」――業界の未来を語る――埼玉県自動車車体整備協同組合・前理事長 神山憲秀氏が講演

通常総会終了後、埼玉県自動車車体整備協同組合の前理事長・神山憲秀氏による講演会が開催された。演題は「変える決意と変わる覚悟」。新理事長に小谷地秀章氏が就任したことを受けて行われた今回の講演では、自動車整備業界の変化と地域社会との関係性、そして次代を担う若手への期待が語られた。

■ 技術革新と業界の転換期

神山氏は講演の冒頭で「今、整備業界は大きな転換点にある」と指摘。EV(電気自動車)やAI、量子コンピューターの進化によって、自動車の構造や整備の在り方そのものが大きく変化している現状を説明した。

「修理や診断の現場はすでにコンピューター制御が中心になりつつあり、OBD(車載自己診断機能)への対応力が不可欠になっている。若手整備士にはこれまでとは異なる知識と技術が求められている」と警鐘を鳴らした。

■ 地域との連携が鍵に

自動車ユーザーの高齢化や地方ディーラーの撤退が進む中、整備業者の地域における役割はより重要になっている。神山氏は「地方では自家用車が公共交通の代わりとなっており、私たち整備業者が“地域のインフラ”にならねばならない」と語り、自治体や地域団体との連携強化を提案した。

■ 若手へのメッセージ:「恐れず挑戦せよ」

長年にわたり青年部の活動を主導してきた神山氏は、若手人材の育成にも言及。「失敗を恐れず、親会に遠慮せず発言してほしい」と呼びかけた。特に、青年部の年齢制限が緩和されたことにより「若手らしい活力が薄れてきたのでは」との懸念も示した。

■ 講演後の質疑応答

会場では参加者からの質問も寄せられ、神山氏が一つひとつに丁寧に回答した。

Q:10年後の車は?
 「センサーや自動運転が標準装備となり、より安全・高性能に。ただし、アナログ技術も一定期間は残るだろう」と予測。

Q:中国メーカーの台頭について?
 「日本車の優位性はもはや絶対ではない。“良いモノを作れば売れる”時代は終わった」と現状を分析。差別化の必要性を強調した。

Q:小規模整備業の生き残り方は?
 「M&Aだけでなく、専門分野への特化やSNSを活用した情報発信が有効」とアドバイスした。

■「笑顔のために」――地域と共に歩む未来

講演の締めくくりでは、「すべての行動の原点は“誰かを笑顔にしたい”という思い」と語り、地元・深谷市にFM放送局を設立し、災害時や高齢者向けの情報発信に役立てたいという今後のビジョンを披露した。

神山氏の言葉には、業界の変化を受け止めながらも、地域社会とともに歩む覚悟と情熱がにじんでいた。